最終更新日: 2026年7月14日
この記事は、出産でもらえるお金の基本となる「出産育児一時金」について、金額・受け取り方・申請期限・差額請求の手順を、厚生労働省の公式情報にもとづいて整理したものです。2023年4月に42万円から50万円へ引き上げられて以降の最新の内容で解説します(古い記事では42万円のままの情報が残っています)。
あわせて、健康保険組合の付加給付や自治体の上乗せなど「一時金以外にもらえるお金」もこの記事でまとめて確認できます。制度の要点だけ知りたい方は出産育児一時金の要点まとめをご覧ください。
出産育児一時金とは?1人につき原則50万円
結論として、出産育児一時金は、公的医療保険の加入者が出産したときに、子ども1人につき原則50万円が支給される制度です。双子なら2人分(100万円)が支給されます。
正常分娩は健康保険が使えず費用は全額自己負担になるため、その負担を軽くする目的で健康保険法等にもとづいて支給されるものです。会社員・公務員・自営業・扶養に入っている方まで、公的医療保険に加入していれば幅広く対象になる、出産のお金の土台となる給付です。
いくらもらえる?50万円と48.8万円の違い
支給額には2段階あります。
| 出産のケース | 支給額 |
|---|---|
| 産科医療補償制度に加入する医療機関等で、妊娠22週以降に出産 | 50万円 |
| 産科医療補償制度に未加入の医療機関等での出産、または妊娠22週未満の出産 | 48.8万円 |
差額の1.2万円は「産科医療補償制度」の掛金分です。これは分娩に関連して重度脳性まひとなった赤ちゃんと家族を補償する制度で、国内の分娩を扱う施設の大半が加入しています。通常の妊娠・出産であれば「50万円」と考えておけばよいですが、支給額の内訳は「本人分48.8万円+掛金分1.2万円」という構造になっています。
なお、この金額は2023年(令和5年)4月に原則42万円から50万円へ大きく引き上げられたものです。それより前の情報をもとにした「42万円」という記載を見かけたら、古い情報だと判断してください。
対象者と支給要件
支給要件はシンプルで、次の2つです。
- 出産時点で公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)に加入している(被扶養者を含む)
- 妊娠4ヵ月(85日)以上の出産である
出産の方法や場所は問われません。自然分娩・帝王切開・無痛分娩のいずれでも、病院・診療所・助産所のいずれで出産しても対象です。また、妊娠4ヵ月(85日)以上であれば、死産・流産の場合も支給対象になります。
帝王切開・海外出産・退職後でももらえる?
判断に迷いやすいケースを整理します。
- 帝王切開: 対象です。手術費用には健康保険(3割負担+高額療養費)が適用され、それとは別に一時金も支給されます
- 海外出産: 出産時点で日本の公的医療保険の加入資格があれば申請できます。後述の償還払いでの手続きになります
- 退職後の出産: 退職から6ヵ月以内の出産であれば、退職前の健康保険(継続して1年以上加入していた場合)から支給を受けることも選択できます。現在加入している保険(国民健康保険や配偶者の扶養)からの支給とどちらか一方を選ぶ形です
受け取り方は3つ — 直接支払制度・受取代理制度・償還払い
結論として、ほとんどの方は「直接支払制度」を利用することになります。医療機関が本人に代わって保険者に請求するため、窓口では出産費用から50万円を差し引いた差額だけを支払えば済みます。
| 受け取り方 | 仕組み | 窓口での支払い |
|---|---|---|
| 直接支払制度 | 医療機関が保険者に直接請求 | 費用と一時金の差額のみ |
| 受取代理制度 | 本人が事前申請し、受け取りを医療機関に委任 | 費用と一時金の差額のみ |
| 償還払い | 本人がいったん全額を支払い、後から保険者に請求 | いったん全額 |
直接支払制度の流れ
- 出産する医療機関で合意文書に記入する — 入院時までに「直接支払制度を利用する」旨の書類にサインします。これが手続きの中心で、保険者への申請書提出は原則不要です
- 出産・退院時に差額を精算する — 出産費用が50万円を超えた分だけを窓口で支払います
- 費用が50万円未満だった場合は、差額を保険者に申請して受け取る(次の章で解説)
まとまった出産費用を立て替えずに済むのが最大の利点です。大半の分娩施設がこの制度に対応しています。
受取代理制度・償還払いになるのはどんなとき?
年間の分娩件数が少ない小規模な施設など、直接支払制度に対応していない医療機関で出産する場合は「受取代理制度」を使います。出産前に本人が保険者へ申請し、一時金の受け取りを医療機関に委任することで、窓口負担を差額だけにできる仕組みです。
どちらの制度も使わない(使えない)場合は、いったん全額を自分で支払い、出産後に保険者へ請求して一時金を受け取る「償還払い」になります。海外出産もこの形です。分娩予約の際に、施設がどの制度に対応しているかを確認しておきましょう。
申請はいつまで?いつもらえる?
申請期限は出産日の翌日から2年以内です。直接支払制度を使った場合は施設での合意文書が手続きに当たるため期限を意識する場面は少ないですが、差額請求や償還払いは自分で申請しないと受け取れません。2年を過ぎると時効で受け取れなくなるため注意してください。
償還払いや差額請求の支給時期は、保険者や書類の状態によって変わります。急ぎの事情がある場合は、申請先に目安を確認するのが確実です。
申請先は「出産した時点で加入していた保険」で決まります。
| 加入している保険 | 申請先 |
|---|---|
| 協会けんぽ(中小企業の会社員など) | 協会けんぽの都道府県支部 |
| 健康保険組合(大企業の会社員など) | 勤務先の健康保険組合 |
| 国民健康保険(自営業・フリーランスなど) | お住まいの市区町村の国保窓口 |
| 共済組合(公務員など) | 加入している共済組合 |
| 配偶者の扶養に入っている | 配偶者が加入する保険者(家族出産育児一時金として支給) |
扶養に入っている方の場合は、「家族出産育児一時金」という名称で配偶者側の保険から支給されますが、金額・仕組みは同じです。
出産費用が50万円未満なら「差額」を忘れずに請求
結論として、直接支払制度を使って出産費用の総額が一時金の支給額を下回った場合、その差額(余った分)は申請すれば受け取れます。自動的には振り込まれない保険者が多いため、「余ったら請求する」と覚えておいてください。
たとえば出産費用が46万円だった場合、一時金50万円との差額4万円を受け取れます。全国平均で見ると出産費用は一時金を上回っていますが、地域や施設によっては50万円未満で収まるケースも十分あります(地域差は出産費用の解説記事を参照)。
差額申請の手順と必要書類
手続きの流れはおおむね次のとおりです(名称や様式は保険者によって異なります)。
- 出産後、保険者から届く案内を確認する — 協会けんぽの場合、支給決定通知書などの書類が届きます
- 差額の申請書を提出する — 協会けんぽでは「出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」という様式で、通知書が届く前に申請するか後に申請するかで、医療機関の証明や領収・明細書の写しなどの添付書類が変わります
- 審査後、指定口座に差額が振り込まれる
必要書類は保険者の案内に従うのが確実です。出産費用の領収書・明細書(直接支払制度の利用有無が記載されたもの)は、差額請求や医療費控除でも使うため、必ず保管しておきましょう。
出産手当金との違い — 両方もらえる?
結論として、出産育児一時金と出産手当金は目的も対象者も異なる別の制度で、条件を満たせば両方受け取れます。
| 出産育児一時金 | 出産手当金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 出産費用(分娩・入院費)への給付 | 産休中の収入の補てん |
| 金額 | 1人につき原則50万円 | 給与のおよそ2/3 × 休んだ日数 |
| 対象 | 公的医療保険の加入者(扶養含む) | 勤務先の健康保険に本人として加入する人 |
| 国民健康保険 | 対象 | 対象外 |
会社勤めで健康保険に本人として加入している方は、一時金と手当金の両方が受け取れます。一方、自営業・フリーランスの方や扶養に入っている方は、一時金のみが対象です。出産手当金の金額の計算方法や申請手順は、出産手当金の解説記事で月収別の早見表つきで詳しく説明しています。
出産育児一時金だけじゃない — 出産でもらえる補助金・自治体の上乗せ
結論として、国の一時金50万円のほかに、「健康保険組合の付加給付」「国の妊婦のための支援給付」「自治体独自の助成」という上乗せがあり、住んでいる場所と加入している保険によって受け取れる総額は変わります。
健保組合の付加給付(会社員の見落としポイント)
大企業などの健康保険組合には、法定の一時金50万円に独自の「付加給付」を上乗せしているところがあります。金額は組合によってさまざまで、数万円〜10万円以上の上乗せがある組合もあります。
これは自動的に案内されるとは限らない、会社員世帯の代表的な見落としポイントです。自分(または配偶者)の健康保険組合のサイトや給付一覧で「出産育児一時金付加金」の有無を確認してみてください。
自治体の上乗せ・関連制度
自治体・国の関連給付にも次のようなものがあります。
- 妊婦のための支援給付 — 妊娠届出時と出産後に、合わせて10万円相当が支給される国の制度(自治体経由)
- 東京都の無痛分娩費用助成 — 無痛分娩の追加費用に最大10万円(2025年10月開始)
- 自治体独自の出産祝い金・助成 — 出産応援の給付やギフトを独自に上乗せしている自治体があります。お住まいの自治体の子育て支援ページで確認してください
妊婦健診の助成・出産費貸付制度など関連制度の早見表
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 妊婦健診の公費助成 | 14回程度の健診費用を補助券でカバー |
| 出産手当金 | 産休中の給与の約2/3(働く本人向け) |
| 高額療養費 | 帝王切開など保険診療の自己負担に上限 |
| 医療費控除 | 年間医療費が一定額を超えた分を所得控除 |
| 出産費貸付制度 | 一時金の支給までのつなぎとして無利子で借りられる制度(保険者による) |
妊娠から産後までの「もらえるお金」の全体像は、出産のお金ガイドで時系列に整理しています。
出産費用の無償化で一時金はどうなる?【2026年最新】
結論として、2026年5月29日に正常分娩を保険適用化(標準的な費用を自己負担なしに)する改正法が成立しましたが、施行は「公布後2年以内」で、それまでは現行の一時金制度が続きます。一時金がすぐに廃止されるわけではありません。
施行後の一時金の扱い(現金給付として残すか、移行期をどう設計するか)は現在も議論が続いています。出産予定日が施行時期と重なりそうな方は、「自分の出産にはどちらの制度が適用されるのか」を続報で確認していく必要があります。決まっていること・いないことの整理は、出産費用無償化の解説記事をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 出産育児一時金が50万円になったのはいつからですか?
2023年(令和5年)4月1日以降の出産からです。それ以前は原則42万円でした。古い解説記事では42万円のままの情報が残っているため注意してください。
Q. 出産育児一時金と出産手当金は両方もらえますか?
それぞれの条件を満たせば両方受け取れます。一時金は公的医療保険の加入者全般が対象、出産手当金は勤務先の健康保険に本人として加入している人が対象です。
Q. 申請はどこに・いつまでにすればいいですか?
加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・お住まいの自治体の国民健康保険窓口)に申請します。期限は出産日の翌日から2年以内です。直接支払制度を使う場合は、医療機関との合意文書への記入が申請に代わります。
Q. 死産・流産の場合も支給されますか?
妊娠4ヵ月(85日)以上であれば、死産・流産の場合も支給対象です。手続きの詳細は加入している保険者に確認してください。
Q. 海外で出産した場合はもらえますか?
出産時点で日本の公的医療保険の加入資格があれば申請できます。直接支払制度は使えないため、帰国後などに保険者へ申請する償還払いになります。必要書類は保険者に確認してください。


